昔のアーケードゲームをX68000で遊ぶ
「昔のアーケードゲームで遊びたい!」
定期的にそういう気分になることがあります。
そのためには超高価な「本物のゲーム基板」を購入するのは正直ハードルが高すぎます(最近はグラディウスが100万円するとか)
最近はもっと手軽な方法としては、任天堂switchとか、プレイステーションとかもあります。
でも...
「アノ当時の熱気を感じられるハードウェアで遊びたいな…」
そんなアナタへ、ここでは「X68000という昔のパソコンでアーケードゲームを遊ぶ」方法について紹介します。
(要注意)紹介するだけです!オススメしません!
X68000でどんなアーケードゲームが遊べるの?
1987年に発売されたパソコン「X68000」には多くのアーケードゲームが移植されました。
・スペースハリアー
・ファンタジーゾーン
・グラディウスII
・出たなツインビー
・R-TYPE
・ドラゴンスピリット
・源平討魔伝 などなど・・・・
誰しも一度は聞いたことがあるタイトルが並んでいると思います。
詳しくはこちらの書籍にX68000用ゲームの全タイトルが掲載されているのでオススメです。
それでは現代において、X68000はどうやって入手できるのでしょうか?
X68000実機の入手に立ちはだかる壁
X68000の初代機が発売されたのが1987年(発表が1986年)。
X68000の発売からはすでに40年近く経過しており、そもそも見つかりにくく、運良く手に入ってもあちこち故障していてとてもゲームどころではない状況です。
でもヤフオクとかにたくさん出てるよね?
確かにヤフーオークションなどのネットサイトでは、常にX68000が出品されており入手するだけなら可能です。
問題はそのほとんどのX68000に不具合があるということです。
ヒドイケースだと「メンテナンス済」と書いてあっても、届いてからしばらくしたら動かなくなった...というのも見かけますので、そうなると自力での修理が必要です。
ゲームのために自分で修理って普通にハードル高すぎる
とても万人にはオススメできませんので、ここから先にはX68000でゲームをするためではなく読み物としてお楽しみください。
ゲーム用にオススメのX68000はどれか
それではゲームをするためにはどのX68000がよいのでしょうか?
有名なレトロPCとして「NEC PC-9801」シリーズと比べるとX68000の種類はかなり少ないのですが、微妙にスペックが異なります。
X68000シリーズは大きく3つのタイプにわかれます。
- SCSI非搭載68000機(初代、ACE、EXPERT、PRO)
- SCSI搭載68000機(SUPER、XVI、CompactXVI)
- SCSI搭載68030機(X68030、X68030Compact)
68000機と68030機というのはパソコンの心臓部(MPU)の違いであり、インテルのパソコンでいうところのCorei5とかi7といったCPUに該当します。
X68000用のゲームはX68030では動かないことが多く、逆にX68030専用のゲームはほぼないので、ゲーム用であれば68000機一択です。
ゲームの互換性が低いので要注意
SCSIというのは、USBのような主に外部記憶装置を外付けする規格の名称です。(SCSI=Small Computer System Interfaceの略)
ゲームはフロッピーディスクで供給されているのでどの機種でも遊べるのですが、SCSIがついてることでハードディスクドライブ(HDD)を増設し対応しているゲームをインストールして快適に遊べますし、ゲーム以外の利用においては必須のアイテムでした。
SCSI搭載68000機が入手できなくても、SCSI非搭載機の拡張スロットにSCSIボードを追加することでSCSIデバイスが利用できます。
SCSIボードは1万円くらいで取引されているようですが、最近は入手しづらくなってきているようです。
ボードを追加する際の注意点としては、X68000(縦型)は拡張スロットが2つしかないため、SCSIボードを増設してからは、メモリボードかMIDIボードのどちらかしか増設できません。
FDD(フロッピーディスクドライブ)の種類も要注意です。
5インチFDDの機体と3.5インチFDDの機体があり、流通してるゲームは基本5インチメディアですので、ゲーム目的であれば5インチの機体を選択することになります。
3.5インチマシンの救済方法として、5インチFDDを外付けできる周辺機器もあるのですが入手が難しく高価なためオススメできません。
カラフルな外付けFDDはどれだけ売れたのか?
初代、ACE、PROI、PROIIなどの古めの機種は内蔵のメモリが1MBしか載っていない場合があり、ゲームをするのに専用の内蔵1MBメモリを入手して2MB以上に増設する必要があります。
XM-6BE1A(X68000-ACE&PROシリーズ専用内蔵1Mメモリ) - えくしみえむの在庫処分場 - BOOTH
1GBじゃないよ、1MBだよ
最後に型番に「-HD」とついてる機種はハードディスク内蔵モデルのことです。SCSI非搭載機の場合は、SCSI-HDDではなく、SASI-HDDという別の規格のハードディスクになります。容量も20MBとかで壊れている場合もあるので購入時には気にしなくて良いでしょう。
以上から、現時点でベストな選択肢として、5インチFDDでSCSI搭載68000機でクロックアップによる高速化耐性も高いX68000XVIでしょうか。
X68000を調達してみる
いざ、X68000を探す旅へ!
家電量販店に行って店員さんに「X68000、1台くっださいな~」と言っても当然X68000は手には入りません。
現在、X68000が入手できる主な場所はこちらです。
1.ヤフーオークション
http://auctions.yahoo.co.jp/jp/
X68000の手に入れやすさ1位は断然ヤフーオークションでしょうか。
最近は外側のケースのみだったり、相場よりも異様に高いものなどもありますが、まずはX68000のカテゴリを見てみましょう。
オークショントップ > コンピュータ > パソコン > X68000
流通量★★★(圧倒的)
品質 ★★☆
2.メルカリ
ヤフオク比べると少なかったのですが、最近増えてきました。
たまに掘り出し物が出たりするようですが、すぐに売れてしまうのでX680000をゲットするのはちょっと難しいでしょうか。
流通量★★☆
品質 ★☆☆
3.駿河屋
秋葉原などに店舗を持つショップです。
68本体だけでなくキーボードやゲームなど扱っていますが、ヤフオクと比べるとちょっとお高いです。
以前、X68030セットを購入しました。
流通量★☆☆
品質 ★★☆
4.中古通販のネットモール(ハードオフ公式サイト)
https://netmall.hardoff.co.jp/top/CSfTop.jsp
ハードオフのネット版です。こちらもX68000関連商品の購入ができるのですが、あまり入荷はないようです。
以前、X68000XVI-HDのセットが88,000円という掘り出し物もあったようですが、最近はかなり相場よりも高くなってしまいました。
流通量☆☆☆
品質 ★★☆
5.BEEP秋葉原
秋葉原に店舗のあるレトロPC関連の品揃えが豊富なショップです。わたしもよく訪問しています。
地下へ狭い階段で降りて入店するのでちょっと勇気がいるショップですが、X68000関連の品揃えは秋葉原で一番ではないでしょうか。
同人ハードや修理のための書籍、たまにX68000の実機も売っています。
流通量★☆☆
品質 ★★★
6.秋葉原 神田装備
事前に入店予約が必要な秋葉原ジャンクショップです。空いている日が限られていますが余裕があるときには行ってみたいです。
以前、X68030 Compactを購入しました。
流通量☆☆☆
品質 ★☆☆
Amazonや楽天など一般的なECサイトでのX68000の入手はほぼ不可能
X68000本体の相場と状態の種類
購入の参考にするために、販売されているX68000の値段と状態を見ていきます。
主にヤフーオークションですが「通電確認のみで付属品なし」のX68000本体の価格相場はおよそこんな感じでしょうか(年々上昇傾向にあります)
X68000初代 | 15,000円~ |
X68000ACE | 15,000円~ |
X68000PROI、PROII | 25,000円~ |
X68000EXPERTI、EXPERTII | 30,000円~ |
X68000SUPER | 35,000円~ |
X68000XVI | 80,000円~ |
X68000CompactXVI | 80,000円~ |
X68030 | 80,000円~ |
X68030Compact | 120,000円~ |
次に状態ですが見た目がキレイな状態ほど当然、高値がつきます。
ゲームをプレイする上での確認ポイントとしては
- 電源やFDD(フロッピーディスクドライブ)の状態はどうか?(動く、動かない、不明など)
- 付属品は何がついてるか?(キーボード、マウス、拡張ボードなど)
この2点は必ずチェックしましょう。
1.フルメンテナンス品(オーバーホール済)
BEEPなどで販売されている保証付きのフルメンテナンス品です。もしこれを買える予算があれば一番確実です。
例えばこちらは30万円以上で出品されています。
購入後に故障する可能性はあるので「あくまでも直せる人が、直す手間を省くために購入する」という選択肢とも言えるでしょう。
ゲーム基板が買えそうですが
2.未メンテナンス品だけど起動はする
起動してるならこれでいいじゃん?
電源がメンテナンスされていないと思われるものは今も奇跡的に起動しているだけなので、購入後に最低限電源のメンテナンス(交換)メニューが必須です。
電源を入れた瞬間に、「ボンッ」となって嫌な匂いが漂う・・・・みたいなことも珍しくありません。
FDDが不調やどちらからしか読み込めない、といったパターンはFDDのメンテナンス(交換)が必要となります。
3.電源ランプは点くが起動しない(もしくは電源ランプも点かない)
一番見かけるのはこの状態でしょうか。「通電のみ確認しました」というのもこの状態ですが、実際は「2.起動はする」の状態に近いです。
電源を入れてもファンが回らない、LEDが緑色に変わらない、変わるけど画面に何も映らない、そういう感じのが多いです。
電源ユニットのメンテナンスだけで直れば儲けものですが、おそらくメインボードや下部基盤など、すべての電解コンデンサーの交換と、FDDのグリスアップ、その他、必要に応じた部品交換が必要になります。
4.クロックアップ改造された機体
ここでX68000特有のクロックアップ改造について触れておきます。
クロックアップ改造とは、MPU(CPU)に供給する周波数を例えば10MHz⇒15MHzなどに高くすることで、マシンのパフォーマンスを大幅に向上させる改造です。
今どきなアプリやBIOS画面から設定を変更するといったソフトウェアを使う方法ではなく、基板についているクリスタルオシレーター(水晶発振器)を交換してパターンをカットして基板に配線をしなおすというダイレクトなハードウェア改造です。
当時はこの改造がとても流行り多くのX68000ユーザがクロックアップ改造を施しました(私も知人にお願いしてXVIを24MHz化してました)。
もしもクロックアップ改造機だった場合は回路を取り除く必要があったり、クロックアップ失敗でメインボードも修復必要なケースもありえます。
X68000電源のメンテナンス方法
X68000でもっとも多くハードルの高い電源のメンテナンスの種類について触れておきます。
1.部品を準備して自分で修理する(部品代のみで2,500円~)
腕に自信があればこの方法が一番安上がりです。
しかし、修理に必要な部品の調達コストやエタノールなどの溶剤、ハンダゴテなどの道具、事故や怪我のリスク、なども考えると、逆にとても安上がりではなく、まったくもって初心者にはオススメできません。
大変さを知るのに一度トライするのはあり
2.修理をできる人(プロ)にお願いする(9,000円~12,000円くらい)
私はたまたまヤフオクで知ったのですが、電源の修理を個人でされている方がいらっしゃいます。
依頼できるのであれば、初心者の方にはこちらが一番オススメと思います。
3.ATX電源化する(9,800円~+ATX電源代)
オリジナルの電源にこだわらなければ、純正の電源はあきらめて違う電源をつなげてしまう方法です。
ATX電源化キットというものが販売されており、文字通り、ATX電源が接続できます。
すでにATX電源化されて販売されているX68000もあります。
修理の難易度としてはかなり低いので、キットと電源が手に入いるのであればこれが一番オススメの方法です。
[TBE]SHARP X68000用ATX電源接続ケーブル EXPERT/SUPER/XVI/030用 / ましろん|BEEP ゲームグッズ通販
X68000 Compact用 ATX電源接続ケーブル - SEN::DAC - BOOTH
4.ヤフオクなどで修理済みの電源を購入する(15,000円~50,000円(!)くらい)
そもそも出品されているところをあまり見かけないのと、以前にBEEPさんで50,000円で売ってたという情報もありますが、選択肢としては難しいかもしれません。
ATX電源にするのが一番手軽で安全
X68000拡張ボード相場
拡張ボードが刺さっている場合はその分を購入金額に上乗せする必要があります。
後から追加する必要があるボードであれば最初から一緒に買うのもありです。
本体とセットでよく出品されているものでゲームに必要なメジャーどころのボードをまとめてみました。
相場価格 | 説明 | レア度 | |
MIDIボード | 10,000円~ | MIDI音源を接続するのに必要。コネクタのサイズが2種類あるので要注意。MIDI対応のゲームをするのに手に入れたい。 このボードの他にMIDI音源も必要。 | ★ |
SCSIボード Mach-2(p) | 10,000円~ | 非SCSI機にSCSIデバイスの接続に必要。ゲームのインストールに便利。別途SCSIデバイスも必要。 | ★★ |
メモリボード(4MB) | 12,000円~ | 追加用メモリ。IOデータやツクモから発売されていた。2MBだと8,000円くらい。4MB以上が必要のゲームでは必須(スーパーストリートファイターIIなど) | ★★ |
MercuryUnit | 35,000円~ | 44.1KHz・16bitPCMボード。バージョンがいくつかある。ゲームをする分にはなくてOK。 | ★★★★★ |
MIDIボードがついてたら+1万円、メモリボード4MBがついてたら+1万円、くらいに覚えておくと良いでしょう。
X68000付属品相場
本体以外の付属品の相場も確認しておきましょう。
1.キーボード(15,000円~)
ゲームをする上でも無いと不便なので用意しておきたいです。1万円で手に入ればラッキーでしょうか。
最近はキートップが欠けてる物も多いので要注意です。全てのキーボードがどのX68000でも使えます。
2.マウス(5,000円~)
2ボタンの一般的な形のマウス(PRO用)と、フタをはずすとトラックボールにもなるX68000独特のマウスと2種類あります。
キーボードと同じく、どのマウスもすべてのX68000で利用できます。
経年劣化でボールが割れて使えなくなってる場合が多く、代替品の鉄球を頒布されている方もいます。
「キャメルトライ」や「マーブルマッドネス」などを遊ぶ場合にはぜひ用意したいです。
当時はNECPC9801用のバスマウスを変換してX68000マウスつなぐアダプタを愛用していました。
3.ジョイスティック(8,000円~)
やはりゲームと言えばジョイスティックという人向けに、ATARI仕様のジョイスティックが利用できます。
電波新聞社製のジョイスティックが人気でした。ATARI仕様のものなら大体つながるので入手はしやすいです。
4.サイバースティック(10,000円~)
AfterBurner専用といっても過言でないサイバースティックもよく出品されています。電波新聞社製の別バージョン(XE-1AP)もあり、こちらの方がレアです(性能は同じです)
メガドラミニ2と一緒に発売されたサイバースティックはUSB接続のためX68000では使えません。
5.ジョイパッド・ジョイカード(2,000円~)
ジョイスティックまでは必要ないけど、やはり「慣れてるファミコンのようなコントローラーが良いな…」、という方にはATARI仕様のジョイパッドがおすすめです。
個人的にはこちらのJOYCONTを愛用していました。
6.SCSIハードディスク
大容量のゲームをインストールして遊ぶ場合にはハードディスクが便利です。
当時のハードディスクはすでに寿命を迎えているため、今後はコンパクトフラッシュやSDカードを変換してハードディスクとして使える機器の導入が理想的です(ここでは詳細は割愛します)。
ヤフーオークションでX68000XVI-HDゲット
ここからは実際にX68000の購入をしていきます。
早速、ヤフオクのX68000カテゴリにアクセスして、X68000の出品をウォッチリストにどんどん入れていきましょう。
最初はから入札はせずにしばらくは相場感を掴むために落札価格を眺めるのがオススメです。
今回は2020年9月に、ヤフオクでゲットしてX68000XVI-HDをメンテナンスしていきます。
症状としてはスタンバイの赤ランプは点灯するが電源を入れても緑色に変わらないという「通電確認済」の機体です。
MIDIボード、HDD(80MB)動作品、親亀内蔵メモリ(2MB)つきでしたので、近頃のXVIの相場からするとかなりリーズナブルでした。
今だと2倍の値段くらいいきそう
メンテナンスの準備(修理マニュアル)
最初はメンテンナンスの手順がまったくわからなかったので、こちらのマニュアルを買って読みました。
X68000XVI 修理マニュアル レトロマシン修理マニュアル⑤ - Hirofumi Iwasaki@武者返し.com BOOTH出張所 - BOOTH :
BEEP秋葉原ではアナログ冊子版も売り切れていなければ手に入ります。
「電子工作なんて久しぶり」という私みたいな場合にはこちらのマニュアルの併読もオススメです。
レトロマシン修理はじめの一歩 基礎編 レトロマシン修理マニュアル① - Hirofumi Iwasaki@武者返し.com BOOTH出張所 - BOOTH :
レトロマシン修理はじめの一歩 応用編 レトロマシン修理マニュアル② - Hirofumi Iwasaki@武者返し.com BOOTH出張所 - BOOTH :
メンテナンスメニュー(手順)と必要なアイテム
マンハッタンシェイプ型は、最初、左右のカバーがはずしにくいですが、そこ以外はそこまで難しくないです(完全にバラバラにするのは大変です)。
一番難しいところは交換用のパーツの調達とパーツの交換作業でしょうか。
どこまで故障しているかによりますが、電源とFDDが故障具合次第では修復は相当難しいです。
主な改修は電解コンデンサーの交換になります。
色々な道具が必要となりますので、個人的に「実際に使ってみてよかった」工具を紹介します。
基板の修復に必要なアイテム
一度に用意すると費用負担が大きく感じると思いますが、長い間使用できるものなので、最初からそれなりに良いものを買うのをオススメします。
特にハンダゴテとコテ台はケチらずに行くのがオススメです。技術家庭科で作ったハンダゴテとスポンジを水で濡らすタイプのコテ台を持っていましたが雲泥の差があります。
部品をつけるだけでなく外す必要があり、外した後の基板をキレイにするための道具も必要です。
フラックスクリーナーは基板に残ったハンダヤニを落とすのに必須で綿棒を使うことでクリーナーのハケが汚れずに長持ちします。
耐熱マットは修理作業をするときにだけ広げられるのであると便利です。
タイマースイッチがあるとハンダゴテの電源の消し忘れを防止できます。
仕切りケースにネジや部品を収納しています。100円ショップのSeriaのをよく利用しています。
10年以上使えるので元は取れる
各パーツごとにメンテナンス開始
ネジの種類がたくさんあるので、どのネジがどこについていたかスマホで撮影して残しておきましょう。
それではパーツごとにメンテナンスしていきます。
1.メイン基板
まずはこちらの一番大きいメイン基板です。MPU68000が搭載されており、まさに中心的機能が集約されているボードです。
クロックアップや浮動小数点演算プロセッサの追加、メモリの増設などもこちらへ行います。
メンテナンス箇所としては4個の電解コンデンサーの交換のみ行いました。
コンデンサーの個数が少ないので簡単に見えますが、4層基板ということもありGND側のハンダが溶けにくくはずしにくいので要注意です。
どうしてもハンダがキレイに吸い取れなかった穴は、くぼみが作れたらそこに新しいコンデンサーの足先を突っ込んで、反対から穴にハンダごてを突っ込んで温めると足が通ります。
2.アナログ(ビデオ)RGB基板
次はこちらの映像を出力するボードです。一般的に言うところのビデオカードです。
こちらも8個のコンデンサーを交換するだけなのですが、メインボードと同じくGNDの穴がハンダがうまく吸い取れずに外すのが難しいです。
焦らずに少しずつ進めるしか無い
3.拡張スロット基板
背面にある拡張ボードを差し込むスロットについているユニットです。交換する電解コンデンサーは4つですが、ハンダゴテを当てづらい場所についており、外すのもつけるのも大変手強いです。
ハンダゴテでスロットを溶かさないように要注意
4.コントロール(下部)基板
どの基板よりもダントツに電解コンデンサーが多く36交換します。取り外し自体は他の基板と比べるとそこまで大変ではありません。
とにかく数が多いので少しずつ、+とーを間違えないように取り付けていきます。
そして電源を落とした際にも情報を保持するためのボタン電池がついていますのであわせて電池ホルダー化を行いました。
元々はこのオレンジ色のCR2450ついていますが、調達のしやすさで容量は少なめですがCR2032のホルダーと電池を付けました。
「基板の直上に足を短くしてつける」か、「引き出すために足を伸ばす」の2通りがありますが、今回は、前者の方法でつけてみます。
念のため、出ている電圧(3V)をチェックしました。
電池が切れるたびに底面基板を取り出す必要がある
5.FDDユニット
5.25インチ2HDフロッピーディスク x 2ドライブのユニットです。
モーター駆動系のため、修理の難易度は「電源かそれ以上」の大物ですので不調でなければ、無理せずにメンテナンスは見送るのも1つです。
X68000本体からユニットを取り外してから側面のネジを8つはずすと、ドライブ0と、ドライブ1に、バラせます。
側面のネジが固くて回らなかったので、100ショップのグリススプレーをかけてからネジザウルスで回しました。
この番号でどのX68000用のFDDか分かるのですが、入れ替えられたのかXVIに入ってたのはX68000ACE用のFDDでした。性能は同じですが使われている電解コンデンサーなどが異なります。
極小ネジx2と小ネジx2を外して、シールドのような小さいカバーを取ります。
こさらにコンデンサーのついてる基板を、コネクタやフレキケーブルを抜いて慎重にはずしていきます。
1台のFDDにつき、6つずつ電解コンデンサーを交換しました。取り付ける面に注意します。
フロッピーディスクを抑えるカバーにネジが4つと抑えのネジ3つをはずして、上にマイナスドライバーとかで軽く持ち上げると外れます(固着してる場合がある)
可動部分やヘッド部分を適宜、無水エタノールをつけた綿棒でキレイにして、グリスを落としたところには新しいセラミックグリスを塗りました。
(実はさらに分解すると、奥に3つずつコンデンサーがあります。これは次の機会に)
さらに分解できるのですが、ギアやネジの位置がずれると再起不能らしいのでそこまでは行いません。
最後の鬼門「電源修理」
X68000においてもっとも壊れやすくそして直すのが大変と言われる「電源ユニット」の修理です。
電源修理は「素人は手を出してはいけない。最悪、火災や失明の恐れがある」ので、何が起こっても自己責任です。
1.X68000XVIの電源には型番がついている
X68000は電源ごとに型番がついています。
SH2~SH4は同じ形をしているので表面のシール等で型番を確認してから、交換用部品を準備します。
2.電源ユニットの分解
X68000本体に止まっているネジを外してつながってるケーブルを外します。
反対側のタワーにコネクタがつながっているので、両方のカバーを外す必要があります。
電源ユニットがはずれたらネジを外してケースのフタを開けます。
ケースの底と基板がクリップのような金具で絶縁テープといっしょに挟んであるのを慎重に外すと基板が外れます。
これでも損傷は少なめです。裏面についているヤニ汚れは無水エタノールでキレイにします。
ひどいものだとこの時点で基板が焼け焦げて炭化していることもあり、そのレベルだと手には負えません。
3.古い部品の取り外し
まずは簡単な大きいコンデンサー類やトランスからはずしていきます。
電源基板はハンダが溶けやすいのでどんどん外していきましょう。
小さいダイオードとツェナーダイオードは極性があるので、もしもシルク印刷が消えてる場合は取り付けの際の極性(+ー)に注意です。
外れにくい小さい部品は、ハンダで溶かしながら持ち上げながら外しました。
大きい抵抗やセラミックコンデンサなどは今回対象外としましたが、場合によっては交換が必要でしょう。
4.電源基板の洗浄
100円ショップで見つけたジャストサイズなケースで無水エタノールに浸けます。
1時間ほど無水エタノールに浸けてから歯ブラシや綿棒でゴシゴシしました。それでも落ちない汚れはフラックスクリーナーが良いでしょう。
5.交換用部品の取り付け
小さいパーツからつけていくので、抵抗、ダイオード、IC、コンデンサー、トランスという順序でつけていきました。
ICは丸ポチ(●)の位置を合わせてつけます。
電源の動作テスト
まずはX68000には繋がずに無負荷状態でテストします。面倒ですがきちんとケースに入れます。
電源コードとコンセントの間にこたつスイッチをはさみ、緊急事態(ヤバいときに電源をすぐに落とせる)に備えます。
ドキドキのスイッチオンです。最悪、家のブレーカーが落ちた、みたいなこともあるとか。
正しく修理できていれば空冷ファンが周り、各端子から、+5Vや+12Vなどの電圧が出てるか↓のような情報を参考にチェックします。
最初、電圧が出ていないなど不安定なところがあり、結局、ベテランの方に見てもらいました。
他にも、この下部基板につなぐVHコネクタ(白いやつ)がへたれてきていると、通電しないケースがあるらしく、その場合はさらに交換用の部品やかしめる工具も必要になります。
電源修理は、大物の部品がだめになっていたり、どれだけがんばっても直らないケースもあるようなので、その時はATX電源化も1つの方法でしょう。
各機能の動作テスト
1.電源スイッチ、リセットボタン、インタラプトボタン
まずはコンセントにプラグを挿して背面の電源スイッチONします。ここでXVIの上部のスイッチにあわせて、10MHzもしくは16MHzのランプが赤く点きます。
ここでつかない場合は重症なので、速やかにスイッチを切って電源修理や基板修理まで戻ってください。
フロント下部にある青色のスイッチ(XVIより前の機種なら赤色のスイッチ)を押し込んでONにすると電源のファンが回り、ランプが緑色になって起動します。
ちなみに動作クロックの切り替えは電源OFF時のみ可能です(切り替えにはリセットが必要)
起動せず電源周りには問題がないときはメイン基板の取り付け位置がまずくてショートしていることもあるので、そのあたりもチェックしてみましょう。
本体の上部にあるリセットボタンとインタラプトボタンも押してみてスイッチが壊れていないかチェックします。
2.S-RAM
X68000には電源がOFFになってもいろいろな設定(内蔵メモリの容量やキーリピート速度など)を記憶させるS-RAMがついています。起動時に変なプログラムが入っていないとも限らないので、念の為こちらをリセットしておきましょう。
XVI以降の機種では「CLRキー」を押しながら起動すると初期化する画面がでてきますので、「Y」を押してリセットします。
XVI以前の機種ではやり方が異なり、下部基板にあるバックアップ用電池を外してしばらく放置することでクリアされるようです。
3.FDD
SCSI接続デバイスの用意できているかもしれませんが、まずはスタンダードにフロッピーディスクドライブ(FDD)から起動してみます。
フロッピーディスクを入れずにしばらくすると、ドライブ0のアクセスランプが緑色でチカチカして、下記のようなエラーメッセージが表示されます。
ここで、ゲームやシステム(Human68k)の入ったフロッピーディスクが手元にありましたらそれを入れるとアクセスランプが赤色に変わり、ガッガッガッとフロッピーディスクが読み込まれます。
ここで異音がしたりうまく読み込めない場合は、FDDの分解整備まで戻って部品のチェックや調整を行いましょう。
あわせてFDDのEJECTボタンも正しく動作するか確認します。
FDクリーナーによるクリーニングも効果的です(これも入手が難しいですが)
読み込みはできるが書き込みができないということもあるため、ファイルコピーなどをして、ドライブ0、1,共に読み書きのチェックを行いましょう。
FDDの修理が難しい場合は、FDX68というRaspberry Piを利用したハードウェアを導入する方法もあります。
FDX68 :
4.メモリ
内蔵のメモリ故障はあまり聞きませんがテストしてみます。
ちなみにゲームをするだけであればメモリは2MBあれば問題ありません。
4MB必要なのはスーパーストリートファイターIIくらい
今回は12MBのメモリフル実装してテストしてみます。(内蔵2MB+XsimmVIによる6MB+IODATAメモリボードによる+4MB=12MB)
4-1.XsimmVI
XVIは8MBまでメモリを内蔵できます。(X68030は12MBまで内蔵可能)
増設方法としてはSHARP純正の親亀(CZ-6BE2A)+子亀(CZ-6BE2B)x2か、こちらの東京システムリサーチの内蔵6MBメモリモジュールを用います。
設定自体は簡単で8MBのSIMMモジュールを刺していれば、すべてのディップスイッチをONでよさそうです。
現役当時、純正の親亀子亀がさっぱり手に入らず、XsimmVIには大変お世話になりました。
これからであれば、比較的最近発売されたこちらの内蔵6MBメモリが高機能(クロックアップ改造機能付き)で入手性も高そうです。
えくしみえむ 資料館 :X68000 XVI専用内蔵6Mバイトメモリ [ XM-6BE6AP ]
4-2.PIO-6834-2/4M-1 (4MB)
IOデータ製の4MB増設メモリボードです。こちらは拡張スロットに挿して使います。
見た目が似ている2MB版もあるので調達する際には注意しましょう。
マシンに実装されているメモリの状況にあわせて、ディップスイッチの変更が必要です。
x68000:pio-6834-2_4m_-_memory_expansion_board [NFG Games + GameSX] :
今回は、内蔵2MB+XsimmVI(6MB)にさらに追加するため、8MBからの増設ということは3番のディップスイッチをONですね。
4-3.メモリの動作チェック
chkram.xというツールを使ってテストしてみましたが、memtest68kでもよいとおもいます。
5.拡張スロット
できたら拡張スロットの動作も確認しておきましょう。MIDIボードでテストするのがお手軽でしょうか。
MIDI再生がうまくできない場合、X68000、MIDIデータ、拡張スロット、MIDIボード、MIDI音源と、どこが悪いのかわかりにくいので1つずつ確認していきましょう。
6.ジョイスティックポート、キーボードポート、マウスポート
X68000のジョイスティックポートは前面と背面と2箇所にあるのでジョイパッドなどをつないで正しく動作するか確認しましょう。
同様に、キーボードとマウスもチェックしておきましょう。
7.FM音源(YM2151)、ADPCM、内蔵スピーカー、背面AUDIO端子、ヘッドフォン端子
下部基板がやられてるとこのあたりの出力がおかしくなります(ADPCMの音がすごく小さくなったり、FM音源が鳴らなくなったりなど)。
前面のボリュームスイッチを回すとガリガリいう場合は何度もグリグリ回していると回復します。
8.RS-232C
背面にあるポートです。もとはモデムを繋いでパソコン通信利用が主でしたが、ゲームではRS-MIDIとしての利用か、クロスケーブルでX68000同士をつないでの対戦するためのものなので必要に応じてチェックで良いと思います。
9.その他のポート類、浮動小数点演算プロセッサ
ゲームで利用することはあまりないので割愛します。イメージユニットや拡張FDD、3Dスコープ、TVコントロールなど、ぜひ興味がある方はチャレンジしてみてください。
また、68881(68882)なる、浮動小数点演算用のプロセッサを追加することもできますが、こちらもお好みで追加ください。
FPUを追加してもゲームが快適にはならない
まとめ
いかがでしたでしょうか。とにかくゲームを正常にプレイできる状態のX68000を入手するまでのハードルがかなり高いです。
それでも「X68000の実機でアーケードゲームを遊びたい!」方は、これを機にトライしてみてください!
X68000に接続するモニターについてはこちらの記事がオススメです。
実機に手が届かない場合は、今ならX68000Zという方法もありと思います。