
これまでに「X68000初代」「X68000 EXPERT」「X68000 SUPER」「X68000 XVI」「X68030」などをメンテナンスしてきましたが、悪名高い(?)「X68000 ACE」のメンテナンスだけは、こっそり避けてきました。
というのも、どうやらACEの底基板の修理難易度が高く、わたしの技量では手に負えないと思っていたからです。
しかし、とある方から「高校生当時にX68000ACEとモニターを買って、自転車で担いで持ち帰った思い出のマシンでもう一度遊びたい...」という強い想いに心動かされてメンテナンスを決意しました。
メンテナンスメニュー
はるばる名古屋からACEが到着しました(正確にはACE-HDですが、HDは入っていませんでした)

さて、ACEといっても基本的なメンテナンス項目は同じで、大きく故障していなければ
- 電源ユニット
- 底面基板
- メインボード
- FDDユニット
のメンテナンスになります。より詳しく知りたい方には
X68000 ACE 修理マニュアル - Hirofumi Iwasaki@武者返し.com BOOTH出張所 - BOOTH
こちらの書籍にかなり詳しく載っていますので、これからACEの修理をされる方はぜひご覧ください。


お値段も大変お手頃でオススメ
電源(SH3)のメンテナンス
まずは、定番の「電源が入らない」ということでしたので電源ユニットからメンテナンスしていきます。
X68000ACEの電源ユニットの名称は「SH2」、X68000ACE-HDの電源ユニットは「SH3」という型番で。若干実装が異なりますが、メンテナンスについては基本的に同じ内容で良さそうです。

最近はヤフオクでこちらの電源修理パーツセットを購入しています。自分で0から部品を集めるのは大変なのでとても助かっています。
早速トラブル発生

電源ユニットの分解を進めていくと、特にACE特有というわけではないのですが、電源ユニットから想定外のケーブルが生えています。
恐らくですが、以前のメンテナンスで何かがあったのでしょうか?前途多難ですが気にせず進めます。

フタをあけて見たところ、そこまで基板にひどい損傷(焼け焦げ)などはなく、ややベトベトしているくらいでした。
部品の除去
電動ハンダ吸い取り器なども試しましたが、わたしはハンダ吸い取り線が扱いやすかったので、それを利用しています。

どんどん部品をはずしていきます。

ひどい汚れもフラックスクリーナー(スプレー)で簡単にキレイになるので、1つあると便利です。

部品を取り付ける前に切れているパターンが無いか確認します。

無水エタノールを使って仕上げます。

通称『エタノール風呂』

基板がきれいになったので小さい部品(抵抗、ダイオード)から順番に取り付けていきます。

抵抗はカラーコードが老眼で読めないので、1つずつ測定して取り付けていきます。

100Ωと100KΩを間違えそうになりつつも完成です。

有志の方にFDDへ電源を供給するコネクタを作っていただきわけていただきました。これでヘンテコケーブル問題は解決しました。
コントロール基板(底面基板)のメンテナンス
さて、電源の次は鬼門の底基板です。

ここで苦戦しまくった
充電池の撤去
まずはこいつ、諸悪の根源の充電池です。ほとんどのケースで液漏れしてるようですので、とにかく最初に撤去しました。

コンデンサーの撤去
次に電解コンデンサーを撤去します。とにかく数が多いですが、他のX68Kと大きくは変わらないので黙々と進めます。

電源コネクターの付け替え
EXPERT以降の機種ではこの電源端子部分が1つなのですが、ACE-HDではが2つにわかれており、よりによってその片方のピンが青錆で腐って折れていました。

部分的に修復はあきらめて、根本から作り直すことにしました。

まったく同じコネクタが入手できなかったので秋葉原で必要な部品を買い集めてきます。

電源関係に使う導線はこの「AWG」という単位があり、流れる電流が多くなると太いものが必要とのことで、今回はAWG20のものを用意しました。

下のコードの被覆を剥がして、圧着機でコンタクトピンをくっつけます。
こちらのSK11 DVC-WS102と、PA-21を愛用しています。
なんとか、コネクタのオス・メスを新しくできました。

電解コンデンサーを新しくしていきます。

一旦、完成です。一旦・・・。

FDDユニットのメンテナンス
お次はFDDユニットです。

ACE以降のモデルでは部品のほとんどは同じようですが、モーターユニットに付いてるところだけ使われている電解コンデンサーがやや特殊です。

電解コンデンサーが交換できたら、古いグリスを拭き取りこちらのグリスを塗り直して、ヘッド部分は無水エタノールでキレイにしたら完成です。

グリスは安いし大きいのを買っておくのがよい
RGB(映像)ユニットのメンテナンス
RGBユニットです。68が新しくなるほどコンデンサーの数が少なくなるのですが、このACE用が一番多いように感じます。


気合で交換していくのみ!

どうしてもGND側が溶けづらくて貫通しにくいため、最近はこのようにハンダを盛ってからコンデンサーの足を押し込み、溶かしながら足を通すという方法でやっています。

比較短時間で作業でき基板も痛めないのでなかなか良い方法かなと思います。

全部で21本、交換が終わりました。
メインボードのメンテナンス
メインボードも他の68と変わりなく、電解コンデンサーを4つ交換するだけです。

メモリなどが壊れていなければ、注意点は、RGBユニット同様に、コンデンサーを抜くときにGNDがやはり溶けにくいくらいです。
拡張ユニットのメンテナンス
こちらも他の機種と同じで、交換しづらいですが4箇所コンデンサー交換します。

ハンダゴテでボードが刺さるコネクタを溶かさないように気をつけましょう。
増設1MBメモリ
ACEはデフォルトの内蔵メモリが1MBなので、1MBメモリを足すのが一般的です(足さないと拡張スロットの追加メモリを認識しない!)

ここのコンデンサーは変えなくても問題ないですが、1つコンデンサー交換しておきます。
起動実験
いよいよ動作テストですが、結果から言うと失敗しました(修理できていないということ)

この画面から進みません。さて、、、1つずつ考えられるケースをつぶしていきます。
ちなみに文字通りリセットしてもこの画面が出続けます。

ここから苦難のストーリーがスタート
底基板のオシレータの交換
底基板のクリスタルオシレーター(水晶発振器)が死んでるかもしれない、というコメントがあり、交換してみることにしました。

この長方形タイプの16MHzです。結構固くて、はずすのが大変でした。

秋葉原の千石電商の地下1Fで300円で念の為2つ購入。長方形ではなくて正方形しかない場合は変換下駄をかませればいけるかもしれません。
交換した結果、改善しませんでした。

無念じゃ!
IPL 1.6化
もしかしたらIPLに問題があるのでは?という声があったので、最新の1.6のACE用を用意してROMに焼いてみました。

IPL用のROMはヤフオクで入手しました。

ROMを焼いて交換してみましたが、IPL画面まで進みませんでした。

まあIPLが死ぬケースはあまりない
原因究明のための最後の手段
にっちもさっちもいかなくなったので、見かねたフォロワーさんが「正常動作するACEの底基板と電源貸しますよ!」とおっしゃっていただきご厚意に甘えることにしました。

こちら、どちらもACE-HDの底基板です。赤いリード線のあるなしが気になりましたが、今回の問題とは関係なさそうでした。

早速、電源と底基板を入れ替えて起動してみるとFDDに電源がつながっていない状態でもこの表示へ進みました。
よって、やはり問題があるのは、底基板ということがわかりました。

原因箇所が特定できた
底基板の断線問題
ネット上で底基板の配線図を見つけたので、それを基に配線が切れていないか追っていきました。

見た目はつながっているようでも実は切れているというケースがあるようで特定が難しいです。

とりあえずテスターで1つ1つ調べていって、断線を見つけたら繋いでみます。


結局、現象は変わらないまま
結局プロに依頼
あれこれとやってみましたが結果変わらず。ギブアップしてXでつながってるプロの方に泣きついて、特別に、、、ということで直してもらいました。

参考までに、こんな感じに断線箇所を修復されていました。

写真の左側がほぼ全滅してた感じでしょうか。大変助かりました。ありがとうございます。

見た目で判断せず全部つなぎ直すのが吉
いつかこの情報がACEで同じ現象になって直したい方に役立ちますように。。。
FDDのメンテナンス
起動するようになったのですが、次は見たことがないエラーメッセージに遭遇。

これはACE特有ではなく、劣化してきているFDD共通で起きる問題と思われます。

一難去ってまた一難
「Human.sysのアドレスが異常です」とは一体全体なんなんでしょうか。

ここのバネが原因の場合があるらしく、これの位置によって強さを3段階に調整できるらしく、変えてはテスト、変えてはテストを繰り返したり

最後はここまで分解してみましたが改善しなかったので、このドライブはひとまず諦めて別の68のものとニコイチにしました。
まとめ

完全勝利というよりは痛み分けのような結果となりましたが...、幸い、他の部分はこれ以上壊れておらず、持ち主のもとに返ったあとも快調に動作しているとのこと。
喜びの声



ひとまず良かったです。