1987年に衝撃的なデビューを果たしたMT-32
まだまだ、DTM(デスクトップミュージック)というワードも浸透していなかった1987年(昭和62年!)。
Roland社よりDTM界における先駆者的なMIDI音源として「MT-32」が発売されました。
私は当時、PC8801FHを手に入れたばかりの中学2年生。まだまだYM2203によるFM音源3和音を楽しんでいた頃でした。
MT-32に搭載されている「LA音源」はアナログシンセサイザーの直感的な操作性とFM音源の良いとこどりをした、そんな音源だったようです。また、ピアノだけとか、ギターだけ、とかではなく複数の楽器を同時に奏でることができました。
MT-32の入手時の注意点
私が初めて触れたMIDI音源がSC-55mkII(GS音源)だったため、その前に発売されていたLA音源にはそこまで興味がなかったのですが、X68000のゲームを集め直していく中で、「MT-32対応」という文字を見かけるたびに段々と、
「この黒くてゴツくて液晶パネルのついてるMIDI音源が強烈にほしい!」
と思うようになりました。
そこでオークションで探し始めたときにはこんな感じに2万円を超えていて、ちょっと手を出せなくなっていました。
そんなある日、某レトロPCのイベントの参加していると
「えくしびさん、前から欲しがってたMT-32売ってるみたいだよ!」
「ええっ?!まじで?」
Twitterで欲しい欲しい言っておくモノですね。
イベント開始と同時にまだ買う人が他にいなかったので勢いで買っちゃいました。(お店の人、ありがとうありがとう)
ちなみにMT-32には、大きく分けて前期型と後期型があります。
見分け方はこちらの、背面に「PHONE端子」がついていないものが前期型MT-32で、
こちらの背面に「PHONE端子」がついているのが後期型MT-32です。
前期型は大量のMIDIデータの受信時に取りこぼす可能性があるらしく、PHONE端子もある方がヘッドフォンも接続できて便利なので、できれば入手するのは後期型がオススメでしょう。
また、付属のACアダプターが入手できない場合にはセンターマイナスの650mA、DC9Vのものが使えますので、他のRolandのACアダプターやファミコンACアダプター、USB変換ケーブルなどでも代用可能です(ご利用は自己責任にて)
MT-32のメンテナンス
分解してコンデンサー交換をしていきます。SC-55系のようにボタン電池の交換はありません。
カバーを止めている側面のネジをドライバーで外して、蓋をずらします。
基板が短めのネジ6本で止まっているので外すと筐体からとりはずせます。
コネクタ類を慎重にはずしていきます。
液晶ディスプレイに接続されているフラットケーブルの部分は、白い部分を最初、上に引っ張るのではなく、下に押し込むと少しバネのようになっていてスルッと抜けます。無理に引っ張らないように気をつけましょう。
また、三端子レギュレーターが筐体にネジ止めされているのでネジを外します。
基板が取り外せたら電解コンデンサーを交換していきます。
SC-55系と違うのは、BP(両極性)のコンデンサーが4箇所あるので注意しましょう。
基板上をよく見るとスルーホール(穴)にマイナスを表す「○」がついていないところがBP(両極性)の目印です。
個数 | 耐圧 | 容量 | 備考 | |
C39,C40,C69,C72 | 4 | 16V | 1000μF | |
C30,C54,C63,C79 | 4 | 16V | 100μF | |
C7,C24 | 2 | 16V | 10μF | BP(両極性) |
C48 | 1 | 16V | 10μF | |
C12,C15,C36,C37,C38 | 5 | 16V | 47μF | |
C8,C9 | 2 | 16V | 47μF | BP(両極性) |
C27,C28 | 2 | 50V | 1μF |
動作テストでトラブル発生
サクサクっとコンデンサーを交換して、元通りに戻して動作テストをしてみたところ、ACアダプターを繋いでもコンデンサー交換前には点いていた液晶画面が点きません。
SC-55系のようにPOWER LEDなどが無いので何がだめかわからず……、どこかショートさせてしまったのでしょうか?
交換したコンデンサーの向きをすべて確認して、液晶につながってるフラットケーブルの向きなどもかチェックしてもOKです。
・・・これは詰んだか?やっちまった......
ふと、何か、線がつながっていないところに気づきました。
どうやら三端子レギュレータに繋がっている、赤白青の3本の内の1本が基板からちぎれていました。
元々脆くなっていたのか、作業中に切れてしまったようです。
再度、半田付けをし直してみました。
無事に復活しました。
壊したかと思ってめちゃめちゃ焦りました
MT-32対応X68000ゲーム
X68000用のゲームでMT-32を再生するなら、ZOOM社の「ファランクス」「OVER TAKE」や、KONAMI社の「グラディウスII」「悪魔城ドラキュラ」「出たな!ツインビー」、ウルフチーム社の「グラナダ」などがオススメです。
ROM内蔵のデモ曲のプレイ方法(後期型のみ対応)
SC-55mkIIやU-110にもデモソング再生機能が入っていましたが、MT-32も後期型のみデモソング再生ができます。
5曲と曲数はそこそこですがどれもSC-55mkIIのデモ曲と比べるとかなり短く、まさに音色や演奏能力のデモ、という感じです。
ちょっとした動作チェックにはもってこい