MIDI音源

【発売30年後に解明】微妙すぎるハードウェアバグを修正「Roland MIDI音源 CM-500&CM-32LN」

この記事のポイント

  • CM-500とCM-32LNに潜むハードウェアバグとは?
  • ハードウェアバグの修正方法
  • コンデンサー交換メンテナンス方法

ビンテージMIDI音源ユーザーとしては見逃せない気になる記事が目に止まりました。

約30年前のローランドのシンセサイザーのバグを自力で修理した強者現る - GIGAZINE

えくしび
えくしび

バグってなんだろう?

どうやらRolandの「CM-500」「CM-32LN」などのLA音源部において、ビブラート機能にバグがあるらしいです。

確かにサイトに上げてあるサンプルデータを聞き比べると違いはわかりました。

それでは、このサイトの情報を元にハードウェアデバッグに挑戦してみます。

CM-500の分解

まずCM-500から着手してみました。背面のネジと底面のネジを外すとフタがはずれます。

メインがLA音源(CM-32L相当)でドーターボードの部分がGS音源のようです。

ドーターボードはメインボードと3カ所で繋がってる(刺さってる)ので慎重に抜いてはずします。

ドーターボード上には固体コンデンサーのみらしいので交換はしませんでした。

この写真の上部のオシレータ(X1)と、下部のROM(IC3)を交換していきます。

オシレーター(X1)の取り外し

普段外しているコンデンサーと同じように最初に追いハンダをしてからハンダ吸い取り線なども利用しながら抜いていきます。

基板(ランド)がもろくなっているので焦って抜いて剥がれないように注意しながら外します。

ROMのとりはずし

28ピンのROMのとりはずしです。根気よく追いハンダをしてハンダ吸い取り線でハンダを除去していきます。

写真のように基板の表側から見て、足の先のホールが見えてくるといい感じです。

どうしてもうまく取れない場合は、禁断の表面からのハンダ吸い取り線もありでしょうあまり熱しすぎないよう)

1時間くらい格闘してやっと外れました。

外したところにROMの代わりにマルツオンラインで124円で購入した28ピンのICソケットを取り付けます。

丸ピンICソケット 28ピン 212128WE Linkman製|電子部品・半導体通販のマルツ

くぼみの向きに注意しながら取り付けます。

これでいつでも簡単にROMが交換できて便利です(2度交換することはないかもしれませんが……

ROM焼き作業

いつも使っているROM焼きマシンとソフトウェアを利用しました。

高速超小型汎用プログラマー - aitendo 

同じものがAliexpressでは激安で売ってるのでチャレンジしてみてみるのもいいかもしれません。

EPROMは、ヤフーオークションで1つ150円で調達しました。

CM-500とCM-32LNと2個買いました。送料120円とお安かったです。

書き込みソフトウェアの用意

TL866 High Performance Universal Programmer

こちらをWindowsPCにインストールしてEPROMにデータを書き込みます。

初回はfirmwareの更新をしておきます。

購入したEPROMを挿してみます。

TMS27C512と認識されました。これでEPROMの確認と、吸い出しソフトウェアとマシンの準備OKです。

パッチファイルのダウンロード

https://www.vogons.org/download/file.php?id=130143

CM32LN_MOD.zip

提供されているバグを直すパッチファイルをPCにダウンロードします。

オリジナルのバグありROMデータの吸出し

CM-500からはずしたオリジナルのROMをマシンに挿して、OptionsのCheck IDのチェックを外すと、中身がRead(吸出し)できます。


「TMS27C512@DIP2S」を選択しました。

Rolandの文字が見えるので成功しているようです。適当にファイル名を付けてセーブします。

パッチをあててバグFIXしたファイルを作成する

吸い出してセーブしたオリジナルのROMデータに、先程ダウンロードしたパッチファイル(ips)をあてます。

パッチはこちらのWinIPSというツールを使いました。

SMB Laboratory - WinIPSの公式サイト

パッチされたファイルをEPROMに書き込む

いよいよアップデートされたROMを作成します。

File>Load Fileでパッチをあてたファイルを読み込みます。

改めて購入したEPROMをマシンに挿します。

Programを押して数秒待つと完了しました。

EPROMに窓が開いたままだとデータが消えてしまうようなので、テプラを貼りました。

えくしび
えくしび

ひと目見てバグフィックス版とわかる

サイトによると「ABL-8.000MHZ-B1U(- HC-49 スタイル、8 MHz 水晶発振器)」が必要と書いてあったので、近しいと思ったものをマルツオンラインで2つ購入しました。

https://www.marutsu.co.jp/pc/i/43763834

部品自体は1つ100円くらいですが、マルツだと送料(550円)の方が高くついてしまうので、コンデンサーなどを一緒に注文して3,000円以上にすると送料が無料になるのでお得です。

交換自体はコンデンサーなどの交換と同じで、追いハンダ>吸い取り線>フラックスクリーナーor無水エタノールでお掃除>取り付けでOKです。

ついでに電解コンデンサーも交換してメンテナンスましたが、数がたくさんあってついででやる作業としてはかなり大変でした。

一部、両極品(バイポーラー)のコンデンサーが混ざっているので注意が必要です。

 個数耐圧容量備考
C7,C11,C15,C21A,C27,C34
C39,C45,C56,C62A,C129
116.3V100μF16V品で代用
C3116V2200μF※高さに注意
C416.3V1000μF 
C69A,C70A250V1μF 
C52,C58,C59,C63A
C99,C100,C114,C115
816V10μF 
C54,C55,C67316V1000μF 
C68A,C111,C112316V47μF 
C109,C110216V10μFBP(両極)
C75,C76,C87,C88416V47μFBP(両極)
電解コンデンサー(35個)

C3のコンデンサーは頭が高いとドーターボードにぶつかってしまうので注意が必要です。

まずは先にLA音源の曲とGS音源の曲を再生させてみましたが、問題なく鳴っているようです。

※ちなみにCM-500は背面にあるスイッチでモード切り替えたら反映させるためには電源を入れ直す必要があります。

肝心のビブラートバグが直ってるかどうかを確認するMIDIデータが手元になかったので、X68000用の楽曲作成フリーソフト「Sted2」で、モジュレーションがバリバリにかかったデータを作成してテストしてみました(※画像はSTed2の画面イメージです)

バグを直したCM-500と、まだバグを直していないCM-32LNで比べたところ、聞こえ方が異なりましたので修正は成功したようです。

もう1台の「CM-32LN」の紹介の前に、まずPC9801noteとはNECの名機「PC9801」のノート型パソコンです。

あのPC-9801がノートサイズになった!「NEC PC-9801N」 - AKIBA PC Hotline!

初代98ノート「PC9801n」の発売が1989年、定価は248,000円だったようです。

このノートの「n」と「CM-32L」につけて、モバイルで一緒に利用できるように電池駆動になっていたり、色も98noteに合わせてグレーになっているようです。

今回はACアダプターつきで12,000円くらいでヤフーオークションから入手しました。

分解

裏面のネジを外すとカバーがはずれます。左下のアース線の接続を戻すのを覚えておきます。

シールド面に止まってるネジをはずすと、シールドが上にめくれます。

つながっているコネクタ類の位置を覚えておきつつ、はずします。

背面と裏面のネジを外すと、シールドとバックパネルがはずれます。ネジの種類が微妙に違うので要注意です。

右側のドーターボードがその下にあるコンデンサー交換の時に邪魔なので慎重にはずします。

コンデンサー交換

 耐圧容量備考
C1,C2,C29,C30,C34,C356.3V47μF16V品で代用
C11,C12,C13,C14,C15,C1625V4.7μF両極性、50V品で代用
C24,C256.3V10μF低背、16V品で代用
C266.3V470μF16V品で代用
C32,C33,C39,C4116V10μF両極性
C3816V2200μF接着剤で止まってる
C40,C4216V47μF両極性、50V品で代用
C46,C476.3V1000μF10V品で代用
C52,C5316V10μF 
C58,C66,C83,C85,C87,C90,C98,C1016.3V100μF16V品で代用
C7725V4.7μF35V品で代用
電解コンデンサー(35個)

完了したら、ROMのバグフィックスを行っていきます。

CM-500でうまくできたので、次にCM-32LNの方も修正しました。

CM-32LNはバリバリにシールドされていてるため基板をはずすためにネジがたくさんあり大変です。

写真右のX2オシレーターを交換します。

写真右の「CM-32LN」と書かれたIC19も交換します。

CM-500と違ってすでにソケットになるので抜いて挿すだけなので非常に簡単でした。

CM-500とCM-32LNと両方やる場合は、CM-32LNから着手するのがハードルが低くて良いかもしれません。

自己満足のためだけのような修正でしたが、ぜひ気になった方はトライしてみてください。

もう1種類、PC-9801に内蔵できるLA音源(LAPC-N)のROMにも同じバグがあるので、入手出来たら同様に改修してみたいと思います。

まとめ

  • 提供されている順通り適用すれば確かにバグは直せた
  • ROMを基板からはずすのはCM-500よりCM-32LNの方が簡単
  • ビブラートを使いまくった曲で比べないと分からないくらいのバグ
  • バグというよりは機種による違い(互換性)の問題なのかも

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