anがなくなったじゃん これからはリファラルじゃん(52年の歴史を持つサービス終了が意味すること)
【目次】
52年の歴史に幕を閉じた

人材業界に激震のニュースが飛び込んできました。
アルバイト求人情報「an」サービス終了に関するお知らせ | ニュースリリース | パーソルキャリア – PERSOL CAREER
求人情報「an」が終了へ。紙からウェブへの「サービス転換で後れを取った」 | ハフポスト
タイトルだけを読むと、「アナログ媒体から、デジタル媒体への対応で遅れを取ったため、ビジネスとして厳しくなったので撤退」したように読めました。
あたかも、docomoがガラケービジネスからの脱却が遅れたかのように、イノベーションのジレンマの一例として片付けそうになるところなのですが、果たしてそうなのでしょうか?・・・
飽和しつつあるWeb採用媒体
人材系ビジネスにおけるWebサイト化は、今さらのことですし、Web anという媒体も、TVCMもかなり展開しており最近始まった媒体ではもちろんありません。
だとすると、ここまで築いてきた「an」という大きいブランドを思い切ってすべて捨てるということは、それだけ厳しい未来が予測されたことにほかならないのではないでしょうか。
一体、アルバイト採用の現場において何が起こっているのでしょう?
私が大学生だった1990年代。インターネットが普及する前だったので、アルバイト探しはもっぱら新聞・雑誌・フリーペーパーが中心でした。
その後は、ご多分に漏れずWebサイト化が進み、 雨後の竹の子のように、アルバイト情報サイトが立ち上がりました。

アルバイト情報サイトのランキング2019年版 オリコン顧客満足度|調査企業46社の比較・クチコミ・評判
社会人にとっては馴染みが薄いかもしれませんが、主だったアルバイト探しのサイトはこのページによると
・タウンワーク
・マイナビバイト
・(an)終了
あたりが3強で、ここに
・バイトル
・マッハバイト
・インディード
・LINEバイト
・エンバイト
などが続くようです。(バイトルの乃木坂46の登用などは印象が強く残ってますね。)
これだけ、アルバイト募集サイトが増えたということは、それだけ各サイトでバイト探しをしている人(主に学生)を奪い合うことになり、結果、出稿費用がかけられない会社は、媒体からの採用がどんどん難しくなる構図になっています。
(昨今はインディードに続いて、Google for jobs といった新しい採用手法も出てきており、さらに激化しています。)

バイトをしなくなった学生は本当か?
私の高校時代、バイトは学校で禁止されていました。その反動もあり
「ようし、大学生になったらアルバイトをバリバリして欲しい物買うぞ~」
そういう学生は多かったように思います。
しかし時代は変わりました。
「嫌な思いをしてまで稼ぎたくない」「自分らしく働けないなら辞める」
そんな声も聞きます。

昔は割の良いバイトの代表として、塾講師や家庭教師がありましたが、最近の「個別指導化」の影響もあり、飲食系と時給が大きく変わらないといった事態も起きています。
稼ぎたくないわけではないが、昔とは異なる価値観で働く若者。
従来の方法ではどんどん獲得できなくなっていきます。2014年にすき家が人手不足で深夜営業を休止したのも記憶に新しいでしょう。
これからの時代、アルバイトをどうやって募集して、採用し、定着させていくのか?
今回、たまたま「an」に何かが問題があったというよりは、その背景にある大きい課題が見えてきました。
インターネットとスマホの台頭で変わったこと
ネットでのバイト探しができなかった時代。当時、バイトを始めようとシていた時、大学の同期の紹介でコンビニのバイトを受けたことを思い出しました。
ランチやディナーの時間、大学の近くの飲食店で知っている仲間が働いていれば、どんな仕事かも直接、生の声が聞けますし、そこで働くかどうするか参考にもしやすかったわけです。
誰にでもアクセスできる情報から、個人的に入手できる情報へ。この流れがネット情報が飽和した先に見えてきているのではないでしょうか?
いわゆる「口コミ」の力の復権です。

この流れ、どこかで聞いたことがありませんか?
そうです、販売促進(マーケティング)で起きていることが、ついに人材(リクルーティング)の世界にも起き始めているのです。
TVCMで芸能人が宣伝している商品よりも、知人のブログで紹介されていたり、Amazonや価格.comで評価の高い商品を購入したりすることがすっかり多くなりました。
最近の例では、口コミ情報の無いぐるなびを、食べログが大きくリードしているなど、参考になる事例はたくさんあります。
食べログ VS ぐるなび グルメサイト大手、株式市場の評価で「明暗」分けた理由 | ZUU online :
見渡せば、就職活動においても、一括採用の象徴、「合同説明会」の動員数の減少や、「OpenWork(旧Vorkers)」に掲載された企業に対する口コミを選考前にチェックする、など、同じ理由による社会変化と言えるのではないでしょうか。
就活イベント必死なのはむしろ企業。学生集まらずガラガラのブースも…【就活2019】 | BUSINESS INSIDER JAPAN :
ヴォーカーズ、「Vorkers」から「OpenWork」へ社名変更およびサービス名変更 :日本経済新聞 :
ネットの力による、マスから個へのシフト
もはや、一方的な大企業による力の採用ではどんどん難しい時代になるのでしょう。
個々人が自分で、会社のことを調べて、仕事のことを調べて、エントリーしていく。
電車やテレビでみた広告よりも、自分のネットワークでつながっている友達からの情報を信頼する。
これらは一部では「リファラル採用」とも呼ばれており、従業員スタッフのつながりから人を集めていくやり方で、ただ、導入しているだけでなく、さらに推進している会社も増えつつあります。
もし、これからアルバイトを探すとして、友人が働いていて既に現場の情報がわかっている職場と、そうでない職場があったとしたら、長く勤めたいとすれば、どちらの職場を選ぶでしょうか?

それはアルバイト現場においても例外ではありません。
おしまい。