PC8801FHとの出会い
今回扱うのはレトロPC界隈では人気のNECのPC-88(ぴーしーはちはち)です。
そもそも私が初めてPC88に興味をもったのがPC-8801mkIISR上で動くザナドゥとハイドライドIIでした。
それからというもの、「寝ても覚めても、88が欲しくてほしくて仕方なくて」、毎月ベーマガを穴が開くほど眺めては近所の電気屋さんに足しげく通いました。
88のパンフレットカタログ(PC-8801mkIISRとFR/MR)を集めては親におねだりする毎日(最近、当時のこと確認したところ、親は買い与えたことを全く覚えていないそうな...)
そんなある日、突然家にPC8801FHがやってきました。
てっきりPC-8801mkIIFRが届いたのかと思っていたら、見たことのない機種…でもずっと欲しかった念願のPC88が届きました。
この日はめちゃくちゃ嬉しかった
FHはFRの後継機種で動作クロックが4MHzから8MHzに高速化できるものでした。
確か中学2年生くらいのときに届いたので、PC-8801FHの発売(1986年11月)の何か月か後に買ってくれたようでした。
購入時に付属していた「うっでいぽこ」では飽き足らず、ベーマガのYK-2さんのMMLを打ち込み、ゲームはやりたかったハイドライドIIはもちろん、ヴァリス、ハイドライド3、Ys、ソーサリアン、英雄伝説、北斗の拳など、、、色々楽しみました。
その後……、ほどなくしてX68000が登場して私の気持ちはそちらへ移り、だんだん88を起動することは少なくなっていきました。。。
36年後…ブラックカラーPC8801FHとの再会
そんな令和のある日、昔見た、黒いPC8801FHの広告を思い出しました。
斉藤由貴さん、懐かしいですね。ところで、
「88といえばベージュっぽいというかアイボリーっぽいっていうか、その色こそがアイデンティティ!」
そう思っていた私は、「機能的に普通のFHとなんの違いもない黒カラータイプ」には全く興味が沸きませんでした。
しかし、88活動を再開してPC-8801mkIISRやPC-8801FAを入手していく中で、やはりFHという機種への想いが蘇り、今度は黒FHを手にしたくなり、気づいたら入手していました。
相場からすると普通のベージュ色のFHの3倍以上の値が張りましたが状態もよく良い買い物でした。
黒いPCはホビーパソコンぽく見える
PC8801FHのメンテナンス
レトロPCなので普段使いできるようにメンテナンスします。
いきなり電源を入れると故障がひどくなるかもしれないので、最低限、電源のメンテと内蔵電池の取り外しはやりたいです。
今回もいつもお世話になっている、岩崎先生の修理マニュアルを参考にメンテナンスしていきます。
PC-8801FH/MH修理マニュアル レトロマシン修理マニュアル⑥ - Hirofumi Iwasaki@武者返し.com BOOTH出張所 - BOOTH
本体の分解
カバーの左右のネジ(4本)と背面のネジ(1本)をはずすとまずはカバーがはずれます。
次に背面カバーのネジをはずして取り除くと電源ユニットと拡張スロットがはずせます。
- 拡張スロットユニット
- FDDユニットx2
- 電源ユニット
- メインボード(カバー付き)
という感じにバラバラになりますので、それぞれを固定しているネジを覚えておきます。
電源ユニットのコンデンサー交換(14個)
一番大きい、560V,180μF(KME)の代替品を探すのが一番厄介で、結局モノタロウで購入しました。
到着に1週間くらいかかりました。2つでよいところ2個入りに気づかず4つ注文してしまいました。
耐圧 | 容量 | 備考 | |
C605 | 180V | 560μF | 200V品で代用 |
C609,C659 | 25V | 47μF | KMG |
C612 | 63V | 22μF | 100V品で代用 |
C613 | 25V | 470μF | |
C651,C652 | 16V | 4700μF | ZLHで代用 |
C653 | 10V | 1000μF | WXA(ルビコン)で代用 |
C654,C655 | 25V | 2200μF | LXJで代用 |
C656,C658 | 25V | 220μF | KMG |
C660 | 50V | 10μF | |
C661 | 50V | 0.47μF | KME |
コンデンサー交換前にはフラックスクリーナーできれいにしました。ハンダ割れしているかもしれないので全体的に再ハンダしました。
標準のファンが爆音なのでできれば静穏ファンに交換したいです。
拡張スロットのコンデンサー交換(1個)
コンデンサー1つだけなので難しくはありません。標準サイズをそのままとりつけてOKです。
耐圧 | 容量 | 備考 | |
C6 | 50V | 22μF | KMG |
メインボードの電池除去とコンデンサー交換(12個)
PC88の電池はトラブルの元ですので、交換はせずに基本取り外すのが良いでしょう。
上の写真の右下の電池です。電池から液漏れすると基板を腐食して断線するので要注意です。
耐圧 | 容量 | 備考 | |
C6,C27 | 16V | 220μF | |
C26 | 16V | 470μF | |
C41,C44,C46 | 50V | 4.7μF | |
C45 | 16V | 47μF | |
C47 | 50V | 1μF | |
C7,C9,C37,C38 | 25V | 22μF | 50V品で代用(FH後期型のみ必要?) |
ざくざくとりはずして交換します。
キーボードのコンデンサー交換(2個)
キーボードの中にもコンデンサーが使われているので交換します。
黒くて格好良いですね。コンデンサーが2つ使われています。
どちらもバイポーラー(両極性)のコンデンサーです。
小型のコンデンサーが入手できない場合は、通常サイズのを寝かせて取り付けてもOKでしょう。
耐圧 | 容量 | 備考 | |
不明 | 10V | 47μF | BP |
不明 | 16V | 10μF | BP |
修理したときにショートさせていていキーボードが効かないことがあったので、ハンダ付けには注意しましょう。
また汚れがついていたキーは分解せずにエタノールを付けた綿棒でふき取りましたが、汚れがひどい場合にはキーキャップをはずして洗浄します。
FDDのコンデンサー交換とグリスアップ
問題なく動作していたのとかなり特殊なコンデンサーが多いため、今回は交換は見送りました。特に、0.22μFと、6.8μFのBPの入手が厄介です。
耐圧 | 容量 | 備考 | |
C2 | 25V | 33μF | 低背 |
C4 | 10V | 100μF | 低背 |
C19 | 50V | 0.22μF | 入手難 |
C28,C29 | 50V | 6.8μF | 低背、BP |
C6 | 10V | 2.2μF | 小型 |
これまで愛用していた田宮のグリスを使い切ったので、今回からはこちらのシマノのグリスにしてみました。
大容量で一生分ありそうです
先に古いグリスをエタノールをつけた綿棒でふき取ってから、可動部分にグリスを注油します。
FDDのケーブルを挿すコネクタ部分もエタノール+綿棒でキレイにしてから接点洗浄剤を塗布してをクリーニングしておきます。
【同人ハード】サウンドボードII互換キット
PC-8801FHの後継機種のPC-8801FAにはサウンドボードII相当の音源が載っているのですが、FHには載っていません。
FM音源チップ | 仕様 | |
PC8801FH | OPN(YAMAHA YM2203) | FM音源3和音+SSG音源3和音 |
PC8801FA | OPNA(YAMAHA YM2608) | FM音源6和音+リズム6音のステレオ+SSG音3和音+ADPCM音源1音 |
純正のサウンドボードII(PC8801-24)は出回っている数も少なくお値段も3~4万円以上に高騰しがちなのですが、今回は運良く同様の機能を持つ同人ハードを入手できました。
【完成品】サウンドボード2互換ボード For PC-8801FH/MH こちらのBEEPさんでも取り扱いがありました。
ハンダ付けは若干大変ですが、レトロPC修理に比べればそこまで難しくありません。
地道に部品を取り付けていきます。
この極小のパーツの取り付けが最難関箇所でしょう。
鼻息をかけると飛んでいきます
スペーサーが手持ちの中古金属スペーサーなところを除けばうまくできたようです。
メインボード上のスイッチを「INT」から「EXT」に切り替えると無事にサウンドボードIIから再生されました。
てっきりLINEOUTからの出力だけかと思ったのですが、なんと内蔵スピーカーからも再生されるようになります。
音質を気にしなければアンプやスピーカーを別途用意しなくていいので最高です。
名作ゲームで動作テスト
まずは長年探していてついに手に入れたゲームアーツのシルフィードから。
こちらもゲームアーツで山梨のハードオフ遠征でたまたまに手に入れたヴェイグス。
さらに・・・サウンドボードIIといえば、真打ち、enixのミスティブルー!古代祐三サウンド!
最初、内蔵音源のみで聞いたらなんだかスカスカしていて、サウンドボードIIの威力を見せつけられました!
他にもあったNECの黒いパソコン
PC8801FH以外にも黒いPCはあったのかな?
はい。こちらの98マルチのキャンビーこと、PC9821Cr13がブラックモデルで発売されたようです。
キャリングハンドルがついていて持ち運びもできたようです。
かなりかさばる筐体のようで使うのは大変そうですが、やはり黒い筐体は格好いいですね。
他にはHANDY98や98LTなどもありますが、デスクトップタイプで黒いパソコンは珍しかったようです。
まとめ
背面の同人サウンドボードIIエリアとFDS+の刺さっている拡張スロットのフタがなく中が丸見えなのが気になってることをXにポストしたら…。
なんと、3Dプリンタで作成したフタをフォロワーさんからいただきました!
いつか純正の追加メモリ(PC-8801-02)と、本体とおそろいのディスプレイ(KD862(B))もあるとなお良しですね!